これをお読みのあなたはアントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi, 1678-1741)の作品であろうとされている、「救われたアンドロメダ」という歌劇(セレナータ)をご存知ですか?まだ2002年4月にヴェネツィアで発見されたばかりで、まだ本当にヴィヴァルディのものなのか断定できていないようです。わたしは先日、アンドレーア・マルコン指揮するヴェニス・バロック・オーケストラで2004年に録音されたものを聴いて、アンドロメダの話(ギリシャ神話)に興味を持ったので、このテーマをもとに関連するバロック美術などについていろいろと調べてみました。今回は音楽の話はありません、すみません。
→ わたしが聴いたディスク: HMV - ヴィヴァルディ:歌劇《救われたアンドロメダ》
1553-1559年 Vecellio Tiziano(1488,1490-1576) 179cm×197cm
鎖でつながれたアンドロメダと彼女を襲う海の怪獣、怪獣を退治するペルセウス
まずギリシャ神話 ”アンドロメダ”のストーリーを紹介します。
エチオペアの王妃カシオペアが、「私の娘アンドロメダは、海の神たちより美しい」と豪語したので、怒った海の神たちによってアンドロメダは海の怪獣(くじら?)の生け贄にされることになってしまいます。海面に突き出た岩に鎖で繋がれて身動きが取れないアンドロメダを、怪獣が食いつかんばかりに襲い掛かってきます。すると、いまメデューサ※1をやっつけて首を持って帰ろうとしている英雄ペルセウス※2が通りかかり、美しいアンドロメダをかわいそうに思って助けようとします。しかし怪獣には剣では歯が立たず、ペルセウスは袋から取り出したメデューサの首を見せて怪獣を石に変え、アンドロメダを救出します。(その後、ペルセウスとアンドロメダはめでたく結婚します)
以下は、登場人物について
※1 メデューサ ・・・ 子供の頃から美しかったメデューサは、ギリシャの女神アテネにねたまれていました。メデューサはクロノス
※3の息子のひとり、海神ポセイドンの愛人でしたが、ふたりがアテネの神殿で交わったところをアテネに見つかり、怒ったアテネはメデューサを恐ろしい魔物の姿に変えました。美しい髪は生きたヘビになり、メデューサを直視するものはみな石に変えられてしまうのでした。メデューサはのちにペルセウスに殺され、そのときポセイドンとの間にできた子供ペガサスを産み落とします。
”Das Haupt der Medusa”
1595-1596年
Michelangelo Merisi ( =Caravaggio 1573-1610)
カラヴァッシオ こと ミケランジェロ・メリージの ”メデューサ” です。なんとも恐ろしく生々しい顔ですね。
”Medusa”
1878年
Arnold Bocklin(1827-1901)
スイスの巨匠アルノルト・ベックリンの ”メデューサ” です。こちらは上の作品とは違い、悲しそうな顔です。
”Portrat des Andrea Doria als Neptun”
115cm×53cm 1540-1550年
Angelo Bronzino(1503-1572)
メデューサとは愛人関係にあったという、海神ポセイドンの肖像画です。ゼウスの弟で、古くは大地の神とされていました。ネプチューンとも呼ばれます。この肖像画は男前ですね。
※2 ペルセウス ・・・ アルゴス王の娘ダナエと天空神ゼウスとの間に生まれた子供。アルゴス王は「あなたは孫に殺される」という神託を信じて、美しい娘ダナエを男性の手に届かないように青銅の塔に閉じ込めました。これで孫が生まれないはずだったのですが・・・ダナエを好きになってしまったクロノス
※3の息子のひとり天空神ゼウスが黄金の雨に姿を変えてダナエに降り注ぎ、やがてダナエはペルセウスを身篭ります。ダナエが息子を産むと、怖くなったアルゴス王は娘と孫を箱に閉じ込めて海に流してしまいますがデュクテスという漁師に助けられ二人とも生き延びます。デュクテスはダナエに恋し自分のものにしたいと願うようになります、そこで成長したペルセウスが邪魔なのでだまして魔物メデューサを殺しに行かせます。その後ペルセウスはある競技会に出席して、ある老人を偶然死なせてしまいます。その男性こそあの祖父のアルゴス王で、結局神託は本当になってしましました。
ポセイドンの兄ゼウス(作者不明)の像です。ポセイドンみたいな肖像画を探したのですが、見つかりませんでした。この人は妻以外にも色々な女性と交わったことで有名。ダナエに恋し、彼女と交わるために黄金の雨に姿を変え、彼女に降り注ぎました。結果↓息子ペルセウスが生まれました。
”Perseus holding Medusa's head”
1800年
Antonio Canova (1757-1822)
アントニオ・カノーヴァの ペルセウス(ゼウスとダナエの子)像 です。退治したメデューサの首を持ってるのが見えますね。メデューサはペルセウスにとっては叔母にあたる人物なのですが・・・
”Danae”
Rembrandt Harmensz van Rijn (1606-1669)
185cm×203cm 1636-1647年
オランダの巨匠 レンブラントの ダナエ です。ゼウスが侵入してきたシーンなのでしょうか??・・・裸同然の姿で、ダナエなにをしているんでしょうか。
”Danae” 1907-1908年 77cm×83cm
Gustav Klimt (1862-1918)
クリムトのダナエ。ダナエに恋したゼウスが黄金の雨に変身してダナエに降り注いでいます。彼女はやがてペルセウスを身篭ります。以前この絵を見て「どうして黄金の雨は太ももの間に挟まるように描かれているんだろう」と不思議に思っていたものでしたが・・・そういうことだったんですね。黄金の雨はが金箔で表現されてます。
※3 クロノス ・・・ ギリシャの農耕神、ゼウスとポセイドンの父。サトゥルヌス(サートゥルヌス Sāturnus ←英語でいうサターン)とも呼ばれます。「あなたは子供に殺さる」という神託を信じて、生まれてくる子供をみんな食べてしまったそうです。(でもゼウスとポセイドンは生き残ったんですね、なんでだろ)。最後は息子のゼウスに殺されます。
”Saturn Devouring His Son”
1819年 Museo del Prado, Madrid
146cm×83cm
Francisco de Goya (1746-1828)
スペインの宮廷画家ゴヤの ”子を食べるサトゥルヌス” という絵です。子供に殺されるのが怖いなら子供をつくらなきゃいいのに、と思うのですがそうはいかなかったのですね。